高所において何かトラブルがあったときに作業者の命を守ってくれるのが安全帯です。それはどのようなもので、どんな風に使われているのでしょうか? 今回は高所作業で使用される安全帯について解説します。
安全帯とは、高所で作業を行う者が墜落を阻止するために使用する個人用保護具のことです。建設工事、送電線工事、土木工事、造船、橋梁作業などでよく用いられ、命綱(ランヤード)と帯(ベルト)、フックから成っています。
安全帯は「労働安全衛生規則」によって高さ2m以上の箇所で作業床が設けられない場合に使用することが定められており、またその構造や性能は厚生労働省の「安全帯の規格」によって規定されています。
安全帯には主に以下の2つの種類があります。
胴ベルト型安全帯
腰に巻き付ける胴ベルトと、ベルトにつながったランヤードだけで構成されたシンプルな安全帯です。ベルトはバックルで腰に固定し、ランヤードは先端のフックを使って鉄骨などの構造物に取り付けます。万一、足を踏み外すなどしたときにはランヤードで宙吊りになって落下するのを防ぎます。
ハーネス型安全帯
落下傘などに使用されているものと似た構造のハーネス(ベルト)と、ランヤードで構成された安全帯です。ハーネスは腰以外に肩、太もも、臀部などにもベルトを装着するため、胴ベルト型に比べると墜落阻止時の体へのダメージが少なくなり、抜け落ちる危険性も減ります。昨今では、鉄塔や高層ビルなどの超高所を中心に普及が進んでいます。
柱上用安全帯は、電柱など柱状の構造物に登って行う作業で使用される安全帯です。U字つり用安全帯という両手で作業ができるように考えられたタイプと、1本つりでも使用できる兼用安全帯の2種類があります。
U字つり用安全帯
ランヤードのロープ部分を電柱に回し、ベルトに体重をあずけることで姿勢を固定して、両手で作業ができるタイプの安全帯です。ランヤードをU字型に回すのでこの名前がついています。
U字つり1本つり兼用安全帯
U字つりで作業姿勢の保持ができ、さらに胴ベルト型安全帯のように1本つりで墜落防止にも使用できる安全帯です。1本のランヤードでU字つりか1本つりかのどちらかの使い方ができるタイプのほかに、U字つりをしながら同時に1本つりもできる常時接続タイプもあります。
安全帯は正しい使い方をしなければ、本当に「安全」とはいえません。
どの安全帯もまずベルトやハーネスを正しく体に装着する必要があります。特に胴ベルトは腹部や臀部ではなく、腰骨の位置に正しく締めなくてはなりません。またバックルにベルトを通すときも製品によってやり方があるので、正しい方法で通しましょう。
フックは腰より高い位置の丈夫な構造物に取り付けます。体重がかかったときにフックが効かなくなるような取り付け方はNGです。またランヤードのロープは、墜落時に鋭い角に触れて切れるようなことがないように注意します。さらに墜落したときに体が振り子状態になって壁にぶつかるようなことがないことも確認します。もしも墜落したらどうなるかを想定して、フックを取り付ける場所、ランヤードの位置を正しく選択する必要があるということです。
安全帯の使用前点検も必ず行いましょう。ベルト、バックル、ランヤードのロープ、フックに傷、摩耗、変形がないかチェックします。薬品や塗料がかかっている場合も硬化していて切れやすくなっていることがあるので注意します。必ず念入りに安全を確かめてから使用するようにしてください。
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