日本の建築技術は非常に高く、新しい建物が次々と作られています。新しいものを作るためには、当然古いものを壊す必要があるわけですが、一度完成した建物をバラバラに解体するためには、周辺の環境に配慮し、安全かつ効率的に作業を進めることが求められます。
その現場で力を発揮するのが、建物の取り壊しのプロフェッショナル「解体工」です。ここでは、その仕事内容について詳しく説明していきます。
解体工の仕事は、老朽化の進んだ建物や、建替えなどによって使用目的がなくなった建物を取り壊すことです。
個人からの依頼はもちろん、大手ゼネコンの協力会社として仕事をするだけでなく、道路の拡張による取り壊しの場合には、行政からの命令によって解体を行うこともあります。
一口に「取り壊す」と言っても、建物の構造や取り壊す目的によって、解体方法や手順は異なります。解体のための足場架設、建物へのシート貼付けなど、現場に応じた緻密な作業が求められるのです。
また、近隣への騒音に対する配慮や安全の確保はもちろん、周辺環境の保全、建築リサイクル法や廃棄物の正しい処理への対応など、高い技術力と幅広い分野に対する知識が必要なのもこの仕事の特徴です。
建物を解体するための方法は、木造や鉄骨などその建物が何で作られているかによって異なります。主な解体工法とその特徴は下記の通りです
【木造建築解体】
手壊し工法
バールのような簡単な工具を使って、文字通り手作業で解体を行う工法です。振動や騒音が少ないため、建物の一部のみを解体する場合には効果的。
また、重機を使わないため狭い土地や住宅密集地などでも作業ができます。解体後の廃棄物を分別しやすいメリットもあるでしょう。
機械解体工法
木造建築の解体で最も多く用いられる工法で、ハサミ機を取り付けた油圧ショベルによって解体を行います。大きな木造建築物でも対応が可能ですが、振動や騒音、粉塵なども多く、近隣への配慮がより必要になります。
【RC(鉄筋コンクリート構造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート構造)解体】
カッター工法
鉄骨切断用カッター機を取り付けた油圧ショベルによって解体する工法。解体のスピードが早いため、大規模な解体にも対応できます。
圧砕工法
コンクリートを噛み砕く圧砕機を取り付けた油圧ショベルによって解体する工法。重機を用いている割には騒音や振動が少なく、コンクリート解体では最も多く用いられている方法です。ただし、粉塵の発生が多いというデメリットがあります。
ハンドブレーカ工法
ハンドブレーカを用いて解体を行う工法で、はつり工と呼ばれる技術者が作業を行います。一部分のみの解体や内部の解体、重機が入ることのできない狭い場所での解体に適していますが、騒音や粉塵に対する配慮は不可欠です。
解体工として仕事をする上で注意をしなくてはいけないのが、解体工事中の何らかの事故によって、一般の人を死亡または致傷させる「公衆災害」や、解体工自身が死亡したりケガをしたりしてしまう「労働災害」を起こさないということです。
そのため、解体に関するガイドラインや仕様書をしっかりと把握して、安全な作業に徹することが求められます。また、アスベスト対策や騒音振動対策、建設廃棄物対策など、環境への充分な配慮も不可欠だということを理解しておきましょう。
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第十六回『左官工(塗り壁)の仕事内容について』
第十五回『塗装屋(ペンキ屋)の仕事内容について』
第十四回『配管工の仕事内容を知ろう』
第十三回『危険物取扱者はどんな仕事をしている?』
第十二回『民間の安全を守る警備員の仕事内容』